生理で血の塊が出るのは病気のサイン?原因について解説

生理
更新日:2025.08.25
生理で血の塊が出るのは病気のサイン?原因について解説

生理時に、血の塊が混ざっているのを見つけたことがある方は多いのではないでしょうか。そんなとき、何らかの病気を疑う人もいるかもしれません。この記事では、生理のときに血の塊が混ざる原因や正常な生理について解説しています。また考えられる原因や、産婦人科の受診が必要になるケースについても紹介します。

生理のしくみとは?

生理(月経)は、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの働きによって妊娠に備えて厚くなった子宮内膜が、妊娠が成立しなかった場合に不要となり、体外へ排出される現象です。妊娠が起きなかった際には、「プロスタグランジン」という物質が分泌されて子宮を収縮させ、その作用によって子宮内膜が血液とともに剥がれ落ちます。このプロスタグランジンは子宮の動きを活発にする一方で、痛みを引き起こす性質もあり、そのため生理の際に下腹部の痛みや強い不快感を感じることがあるのです。

血の塊が出るのは病気のサイン?

生理の際にサラサラとした血液ではなく、どろっとしたレバーのような血の塊が出ると、体の異常を疑ってしまう人もいるでしょう。
しかし結論からお話しすると、血の塊の量が少量であるなら一般的な生理の症状です。
生理による出血は子宮内膜がはがれることで起こり、出血したばかりの血液はドロドロの血の塊です。
子宮内ではこの血の塊を溶かす酵素が分泌され、サラサラになった経血は体外に排出されるようになります。
このときに子宮内膜が厚く成長していると、酵素量が足りずに血の塊を溶かしきれず、一部が塊のまま排出されるのです。
子宮内膜は女性ホルモンの一つであるエストロゲンの作用によって成長しますが、エストロゲンの分泌量が多いと子宮内膜が厚くなることがわかっています。
エストロゲンの分泌量が多い20代や30代のうちは、血の塊のような経血が出ることは一般的な現象です。
ただし血の塊が大量に出る場合は「過多月経」の可能性があり、子宮筋腫や子宮腺筋症などの病気が隠れていることも考えられます。

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当てはまったらもしかしたら病気の可能性も?

少量の血の塊が出るのは通常の生理の症状ですが、量が多い場合は過多月経の可能性があり、この背景には何らかの婦人科系の病気が原因となっていることがあります。
例えばレバーのような血の塊が一度の生理で大量に出たり、7日を超えても出血が続いたりする場合は、子宮筋腫や子宮腺筋症などの病気のサインかもしれません。
また経血の量が多いことで貧血となり、頭痛やめまいなどの症状が現れ、生理が重くなることも考えられます。

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過多月経とは?

過多月経は、通常よりも経血の量が多い状態のことをいいます。
経血量が多く、昼用のナプキンを1時間ほどで交換しなければいけなくなるような症状が発生します。
ホルモンバランスが崩れることによって子宮内膜が異常に厚くなったり、子宮自体が大きくなったりし、出血量が増えることで起こります。
具体的には1回の月経でおよそ150ml以上の経血が出ると過多月経と診断され、何らかの婦人科系の病気や、女性ホルモンのバランスに異常が起こっている可能性があります。

・過多月経の原因
過多月経の原因は大きく3つあり、婦人科系の病気、女性ホルモンの異常、内科の病気のいずれかが疑われます。
婦人科系の病気では子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜増殖症、子宮内膜ポリープ、子宮内感染などが原因として考えられます。
またホルモンバランスが乱れると、排卵が遅れて生理を促す黄体ホルモンのプロゲステロンが働かない状態になることがあります。
エストロゲンが分泌される期間が伸びることで、子宮内膜が異常に厚くなりはがれ落ちる際に出血量が多くなります。ホルモンバランスの安定しない思春期や、大きくホルモンバランスが変化する更年期に見られる原因です。
また、甲状腺の機能異常など内科の病気が過多月経を引き起こすケースもあります

過多月経のセルフチェックシート

過多月経セルフチェックシート

□生理用品を1~2時間以内に取り替える必要がある
□昼間でも夜用ナプキンを使用するほどの経血量
□夜間に寝ているときでも起きて生理用品を取り替える
□生理中にレバー状の血の塊が何度も出る
□生理期間が7日以上ある
□生理痛が重い
□出血量が以前よりも増えている
□貧血気味(疲労感・息切れ・頭痛・動悸などがある)

いくつかの項目に心当たりがある場合は、過多月経の可能性が考えられます。通常の生理では経血量がおよそ20〜140gの範囲に収まるとされていますが、140gを超える出血は過多月経の目安となります。ただし、実際に自分の経血量を正確に把握するのは難しいため、医療機関では鉄欠乏性貧血の有無や、動悸・息切れ・疲労感・頭痛といった貧血に関連する症状をもとに判断することが一般的です。また、経血量の多さから「漏れてしまうのでは」という不安を抱えたり、頻繁なナプキンの交換によって費用や手間がかさんだりするのも、過多月経による日常生活への影響の一つです。思い当たる症状がある場合は、早めに婦人科で相談されることをおすすめします。

日本産婦人科医会 正常な生理(月経)の目安を教えてください!

過多月経を引き起こす病気

過多月経の背景には、思いもよらない病気が隠れていることもあります。そのため、症状に心当たりがある場合には、早めに婦人科で検査を受けることが大切です。診察では、まず内診や超音波検査で子宮の状態を確認し、必要に応じてMRI検査や子宮鏡検査など、より詳しい検査が行われることもあります。以下に、過多月経の原因としてよく見られる病気についてご紹介します。

子宮筋腫

子宮の壁にできる良性の腫瘍で、特に「粘膜下筋腫」というタイプは出血が多くなりやすく、血の塊が混じることもあります。筋腫は女性ホルモンの影響で徐々に大きくなり、生理のたびに出血量が増えていく傾向があります。出血だけでなく、生理痛が重くなったり、不妊や流産の原因になる場合もあるため、治療が必要になることもあります。

子宮腺筋症

子宮の筋肉の中に子宮内膜のような組織が入り込む病気で、こちらも強い生理痛や過多月経の原因となります。40代以降の方や、出産・手術の経験がある方に多くみられ、子宮が大きく硬くなることで症状が悪化することがあります。

子宮内膜ポリープ

過多月経の原因となることがあり、生理が長引いたり不正出血が続いたりするケースもあります。ポリープ自体は良性であることがほとんどですが、症状が気になったり、不妊の原因になっている可能性があれば、治療で取り除くことが可能です。

子宮頸がん・子宮体がん

生理の出血量が急に増えた、期間が長引く、不正出血があるといった変化が見られる場合には、「子宮頸がん」や「子宮体がん」、「子宮内膜増殖症」なども考えられます。子宮頸がんは20代後半から、子宮体がんは40代以降で増加する傾向があり、定期的な検診を受けていない方は一度検査を受けることをおすすめします。

女性ホルモン分泌が不安定

思春期や更年期など、ホルモンバランスが揺らぎやすい時期は、経血量が増える傾向があります。特に10代ではホルモンの働きがまだ安定していないため一時的に出血が多くなることもありますが、成長とともに落ち着いてくるケースもあります。一方で、学校生活や日常生活に支障が出るほどつらい場合には、治療を検討してもよいでしょう。

過多月経は「体質だから仕方ない」と思われがちですが、原因を明らかにし、適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます。少しでも気になることがあれば、ためらわずに専門医に相談してみてください。

過多月経の対処法(治療法)

過多月経の治療には、鉄剤などを使った貧血への対応や、ホルモンを使った治療、手術による治療などがあります。原因や症状の程度によって、どの方法が合うかは変わってきます。また、血液の病気が関係している場合は、まず血液内科の先生の治療が優先されます。

低用量ピルの服用

女性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)をバランスよく含んだ薬を、毎日同じ時間に1回飲む方法です。排卵をおさえて経血の量を減らすほかに、生理痛や月経前のイライラ・不調(PMS)の軽減、生理周期の安定など、さまざまなメリットがあります。ただし、まれに血栓症(血の塊が血管を詰まらせる病気)のリスクがあります。特に、40歳以上の方、喫煙者、肥満の方、前兆を伴う片頭痛がある方などはリスクが高まるため、服用前に医師との相談が必要です。

黄体ホルモン製剤の服用

黄体ホルモンだけを含む薬を、1日2回、決まった時間に飲む方法です。体の中のエストロゲンの働きをおさえることで、子宮内膜の厚みをコントロールし、経血量を減らしたり生理痛をやわらげたりする効果があります。低用量ピルよりも血栓のリスクが低いため、ピルが使いにくい方でも安心して使えることがあります。子宮腺筋症の治療にも使われますが、人によっては不正出血が続くこともあります。

偽閉経療法

閉経と似たホルモン状態を一時的に作り出して、月経を止める治療法です。飲み薬や注射を使い、脳から出る「排卵を促すホルモン」の分泌をおさえます。月経が止まるため過多月経の症状は改善しますが、一時的に更年期のような症状(ほてり、汗、気分の変化など)が出ることもあります。また、治療ができる期間が決まっているため長期的には行えません。

ミレーナの装着

ミレーナは、月経困難症や過多月経の治療に使われる、子宮の中に入れる小さな器具(長さ約3cm)です。やわらかいプラスチックでできていて、1度の装着で約5年間、黄体ホルモンを安定して放出し続けてくれます。子宮内膜が厚くなりにくくなるため、経血の量が減ったり、生理痛が軽くなったりする効果が期待できます。ただし、子宮の中の形が大きく変わっている方や、出産経験のない方は、挿入が難しい場合もあります。

生理の血の塊が大量なら産婦人科を受診して

生理のときに血の塊が出る原因についてお話ししてきました。
生理のときに経血に血の塊が混じる現象は、エストロゲンの分泌量が多い20代や30代のうちには起こりやすく、少量であれば問題ありません。
しかし大量に出血があり、頻繁にナプキンを変えなければいけない症状が現れた場合は、過多月経の可能性もあります。
過多月経の原因にはホルモンバランスの異常や婦人科系の病気が隠れていることもあるため、いつもの生理と比べて違和感があれば早めに産婦人科に相談することをおすすめします。

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監修者

日本医科大学武蔵小杉病院 助教
海渡 由貴
2015年日本医科大学医学部卒業後、2年間の初期研修を経て、2017年より日本医科大学産婦人科学教室に入局。 大学病院、市中病院、クリニックなど幅広く勤務を経験。 日本女性医学会、日本生殖医学会、日本周産期・新生児学会に所属し、日々最新の知識を習得し、現在は日本医科大学武蔵小杉病院にて助教を務める。 2024年にメデリピルにてオンライン診療によるピル処方を開始し、2025年からmederi magazineの記事監修を担当。

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