生理は女性にとって健康状態のバロメーターでもあります。
生理の基礎知識や、生理中でも快適に過ごすためのセルフケアをご紹介。
低用量ピルで生理を止めることはできる?生理を移動したい場合の方法について
楽しみにしている旅行やデート、大事な試験など、「生理が重なってほしくない」という予定は誰にでもありますよね。生理が最適なコンディションではない状態で予定に被ってしまうと、気分も沈んでしまうものです。そのようなときに、ピルを使って生理日を移動させる方法があります。
「ピルで生理をずっと止められるの?」「体の影響ってなに?」という根本的な疑問にお答えしつつ、生理の回数を減らす方法や、予定に合わせて生理を早める・遅らせる方法について解説します。服用時の体の変化や副作用についても詳しくお伝えしますので、毎日を少しでも快適に過ごせる方法を一緒に見つけていきましょう。
もくじ
低用量ピルで生理を止めることはできる?
低用量ピルは生理痛や避妊のために服用されますが、「そもそも生理が来ないようにできるの?」という疑問を持つ方は多いかと思います。結論から言うと、低用量ピルで生理を完全に止めることは、基本的にできません。ここでは、低用量ピルと生理の関係について、わかりやすく解説します。
低用量ピルで生理を止めることはできない
低用量ピルは、生理を完全に止める薬ではありませんが、生理の周期を整える効果があります。ピルは1シートごとに必ず7日間の休薬期間(または偽薬期間)があり、その期間に数日間の出血(消退出血)が起こります。そのため、正しく服用すれば、規則正しい生理のリズムを作ることができます。
ただし、重い生理不順などでは、ピルを飲んでいても周期が乱れたり、不正出血が持続したりすることがあります。その場合は、早めに医師に相談しましょう。
生理の回数を減らす治療法
超低用量ピルの中には、「ヤーズフレックス」のように生理の回数を減らせるものがあります。ヤーズと同じ有効成分を含みますが、最長120日間連続して実薬を服用できる新しいタイプのピルです。服用期間は25日から120日まで幅があり、途中で不正出血が3日間連続して起きたら4日間の休薬期間を設けてリセットします。出血が起きない場合は最長120日まで内服でき、連続投与を行うことで、年間の生理回数を約3回程度まで減らすことが可能です。
この方法は、単に生理の回数を減らすだけでなく、月経困難症の治療としても保険診療で使われています。
ピルでできる月経移動
月経移動には、生理日を遅らせるパターンと生理日を早めるパターンがあります。
主に、「中用量ピル」を使用しますが、既に「低用量ピル」を服用している方は、「低用量ピル」の服用期間を調整することで生理を前後に移動することができます。ここでは、生理を遅らせる方法と生理を早める方法について見ていきましょう。
生理を遅らせる方法
遅らせたい生理日の5〜7日前から、生理を遅らせたい日まで中用量ピルを毎日服用します。個人差がありますが、服用を止めてから2〜5日で生理が始まるため、生理を遅らせることができます。
なお、生理を遅らせたい日数分と5〜7日分の中用量ピルが必要となります。生理を遅らせることを希望する場合は、生理予定日の1週間前までには受診しましょう。
生理を早める方法
生理を早めるには、1か月前の生理日(開始)から中用量ピルを服用する必要があります。早めたい生理日の1か月前の生理中(生理3日目から5日目まで)に中用量ピルの服用を始め、10日間以上毎日服用します。
個人差がありますが、服用を止めてから2〜5日で生理が始まるため、生理を早めることができます。
なお、10日分以上の中用量ピルが必要となります。生理を早めることを希望する場合は、1か月前の生理が始まるまでには受診しましょう。
いずれの場合も、まずは生理日を移動したい旨を医師に相談し、最終的に移動できる日数や可否は医師が判断します。直近での生理日の移動は難しいため、きちんと計画したうえで行いましょう。
| 服用開始タイミング | 使用するピル | 服用期間 | 中止後の生理 | |
| 遅らせる方法 | 生理予定日の5〜7日前 | 中用量ピル | イベント終了まで継続 | 2〜3日後に生理 |
| 早める方法 | 1つ前の生理開始〜5日目まで | 低用量ピル(間に合わない場合は中用量ピル) | 7日~14日以上 | 2〜3日後に軽めの生理 |
月経移動のデメリットや副作用
ピルで生理日を移動させても、身体への悪影響は基本的にありません。医師の指示に沿って服用すれば、安全に調整することができます。ただし、中用量ピルをはじめとするピル全般には副作用が生じる可能性があります。ここでは、血栓症との関係や、生理日を移動させることが体にどんな影響があるのかについても見ていきましょう。
血栓症とは
血栓症は、血管内に血栓と呼ばれる血の塊ができてしまい、血管が詰まってしまう病気です。ピルの服用で血栓症が起こる原因は、ピルに含まれる女性ホルモンである「卵胞ホルモン」にあります。ピルの成分は肝臓で分解されるため、卵胞ホルモンが肝臓に入ると血を固めてしまう凝固因子の合成を促す作用があることから、ピルには血栓リスクがあるとされています。
主にピルの副作用で起こる血栓症は、静脈血栓塞栓症と呼ばれるものです。ふくらはぎにある深部静脈に血栓ができて静脈が詰まってしまう状態から、血栓が心臓まで届き、最終的に肺の血管にまで届くと死に至る危険性もあります。
月経移動でピルを服用中に、以下のような症状が現れたら、速やかに病院を受診するようにしてください。
- 激しい腹痛
- 激しい胸痛、息苦しさ、押しつぶされるような痛み
- 激しい頭痛
- 見えにくい所がある、視野が狭いなどの視力障害
- 舌のもつれなどの言語障害
- 失神、けいれん、意識障害
- 片則のふくはらぎの痛み、むくみ、押すと痛い、赤くなっている
また、静脈血栓症は長時間座りっぱなしが続いたり水分不足が続くと起こりやすい傾向にあります。
特に以下の方は血栓症を発症しやすいリスクがあり、ほかにも持病があるなどの状態だとピル処方自体ができないケースがあります。
- BMI30以上の肥満体質
- 喫煙習慣がある(35歳以上で1日15本以上)
- 40歳以上
月経移動による体への影響
月経移動のために意図的に生理をずらすこと自体が体に大きな悪影響を及ぼしたり、後遺症を残したりすることはありません。
しかし、中用量ピルをはじめとするピル全般には副作用が生じる可能性があります。服用し始めは胃の不快感や倦怠感といった症状が見られることがありますが、生理前に分泌される女性ホルモンがピルによって補充されるために起こる一時的なものなので、過度に心配する必要はないでしょう。
これらの副作用は、通常時の生理と同様の症状だと考え、そのままピルを飲み続けても問題ありませんが、症状が辛い場合は、医師に相談して胃薬や吐き止めなどを併用することも可能です。これらのリスクや副作用について医師にしっかり相談し、納得したうえで服用しましょう。
月経移動は誰でもできる?
生理日の移動を成功させるには、元々生理周期が安定しており、排卵が起きているといった条件が揃っていると安心といえます。一方で、生理不順や無排卵など、なにかしら異常がある場合には生理日の移動が難しい場合もあるため、医師と相談の上、行うようにしましょう。
基本的なピルの服用方法
低用量ピルは、毎日同じ時間に1錠ずつ飲み続けることが大切です。服用は通常21日間行い、その後7日間の休薬(または偽薬期間)を挟むサイクルで進みます。習慣化しやすい時間帯に飲むことで、無理なく継続できるでしょう。
特に、夜に服用すると吐き気や頭痛などの副作用が睡眠中に落ち着きやすく、体への負担も少なくなる傾向があります。日々同じタイミングで服用し、体調と向き合いながら続けられるよう意識してみてください。
低用量ピルで月経移動したいときの飲み忘れや不正出血の対処法
ピルは正しく服用することで高い効果を発揮しますが、飲み忘れや予想外の出血があると不安になりますよね。ここでは、万が一の際に慌てず対処できるように、低用量ピルで月経移動したいときの飲み忘れや不正出血の対処法について解説します。
飲み忘れた場合
前述したように、低用量ピルは毎日決まった時間に飲むのが基本です。飲み忘れた場合は、以下のルールを参考に、気づいた時点ですぐに対処しましょう。
1日(1錠)飲み忘れた場合
・気づいた時点ですぐに飲み忘れた1錠を服用し、その日の分も予定通り服用する
(合計2錠飲んでも問題ありません)
・翌日以降も、元の予定通りに服用を続ける
2日(2錠)以上連続で飲み忘れた場合
・気づいた時点ですぐに飲み忘れた直近の1錠を服用し、その日の分も予定通り服用する
(合計2錠飲んでも問題ありませんが、1日3錠以上は服用しません)
・第1週に飲み忘れ、かつ直前5日以内に性交渉を行った場合は緊急避妊を検討する
・第3週に飲み忘れた場合には、休薬期間を設けずに次のシートを飲み始める
・第4週に飲み忘れた場合には、飲み忘れた錠剤は破棄して当日分を服用するので問題ありません
休薬期間以外に生理がきた場合
低用量ピルを飲み始めた最初の月は、体が薬に慣れていないため、休薬期間ではない(実薬服用中の)時期に出血があることがあります。これは、正確には「生理」ではなく、ホルモンバランスの変化によって起こる不正出血です。
ピル服用中に生理ではない出血があっても、服用を中止せずにそのまま飲み続けましょう。不正出血は、体がピルに慣れるまでのマイナートラブルとして、飲み始めの数か月で自然に解消されることが多いです。ただし、出血が大量に続く場合や、3か月以上経っても出血が長期間おさまらない場合は、必ず医師に相談しましょう。
月経移動ピルをもらうためのチェックリスト
月経移動ピルを処方してもらうために、予め以下の項目をメモしておきましょう。
□最終の生理開始日
□次の生理の開始予定日
□生理を移動させたい日数(生理を来させたくない日)
上記の情報を基に、適切な錠数の中用量ピルを処方してもらいます。
ただし、来院のタイミングによっては希望する日数の移動ができない場合もあるため、最終的には医師の指示に従うようにしてください。
ピルで月経移動をするなら長期的な計画を
ここでは、中用量ピルを用いて生理日を移動をするための方法について解説してきました。
実際に生理日を移動させるには、長い目で考えた計画が大切になってきます。
突発的に移動をしようと思ってもできるものではありません。
また、生理周期が安定していることや排卵が起きていることも重要な条件となってくるため、不安定な場合には低用量ピルなどのホルモン療法で整えてあげる準備も必要です。
生理日を移動したいけど可能かどうかわからない場合には、まずは医師に相談してみてくださいね。
生理を止めたいほど生理痛やPMSに悩むなら、早めに相談しよう
毎月のつらい生理痛やPMSに悩み、「いっそ生理を止めてしまいたい」と感じるほど追い詰められているなら、我慢せずに婦人科へ相談しましょう。
低用量ピルは、子宮を収縮させる痛みの元(プロスタグランジン)の分泌を抑え、生理痛やPMSの症状を軽減できます。また、生理の回数を減らす治療法も選択肢の一つとなるため、あなたの悩みに合わせた最適な解決策がきっと見つかるでしょう。
「ピルは怖い」「副作用が不安」という心配もあるかもしれませんが、まずは医師に相談することで、漢方や症状に合わせたピルなど、あなたにぴったりの方法を一緒に見つけることができます。一人で抱え込まず、悩みを軽くして、自分らしくいられる毎日を過ごしましょう。
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