ピルは50歳以上も飲める?年齢の関係性やほかの避妊法、更年期治療法まで解説

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更新日:2025.12.05
ピルは50歳以上も飲める?年齢の関係性やほかの避妊法、更年期治療法まで解説

40代後半から50代にかけては、体や心の変化を感じやすい時期ですよね。ピルの服用を続けるべきか迷ったり、更年期の症状に悩まされたりする方も少なくないでしょう。
ピルは安全性の高い薬ですが、WHOのガイドラインでは、50歳以上は血栓症などのリスクから原則推奨されていません。
では、ピル以外の適切な避妊方法や生理痛の改善、更年期障害の緩和にはどんな方法があるのでしょうか?
ピルを服用できる年齢のルールや、喫煙、持病といった年齢以外でも気を付けたいリスクについて解説します。ピルに関するよくある質問にもお答えしているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

ピルは50歳以上も飲める?

WHOや日本のガイドラインによれば、ピルを服用できるのは閉経していない50歳までの女性です。50歳でまだ閉経していないとしても、加齢とともに心血管系疾患やピルの副作用である血栓症のリスクが高まるため、50代になったらピルの投与を控えることが望ましいとされています。
ただし、ピルを飲めるかどうかは、状況によって変わる可能性があるため、必ず医師の判断を仰ぐようにしてください。

※参考:「OC・LEPガイドライン2020年度版」(公益社団法人 日本産科婦人科学会)

アフターピルの服用について

50歳以上でまだ閉経していない場合は、アフターピルの服用は可能です。アフターピルは、避妊に失敗した際に服用する緊急避妊薬で、性行為後72時間以内の服用で約84%※の避妊効果があるとされ、早く飲むほど効果が高まります。
アフターピルのレボノルゲストレルには血栓症のリスクはないため、年齢制限はありません。
閉経していない場合、妊娠の可能性はあるため、避妊が十分にできなかった場合はアフターピルの服用を検討してください。

※参考:「緊急避妊法の適正使⽤に関する指針(令和7年改訂版)」(公益社団法人 日本産科婦人科学会)

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そもそもピルを服用する目的とは

ピルは単なる避妊方法のひとつではなく、女性ホルモンのバランスを整えることで、生理痛の緩和や肌トラブルの改善など、さまざまな健康効果が期待できる薬です

ピルを服用する主な目的と期待できる効果

  • ・避妊効果(正しく服用すれば約99.7%の高い効果)
  • ・生理痛や月経不順の改善(排卵を抑え、子宮内膜の増殖を抑制)
  • ・PMS(月経前症候群)の緩和(ホルモン変動を抑える)
  • ・ニキビや肌荒れの改善(男性ホルモンの作用を抑える)
  • ・卵巣がん、子宮体がんのリスク低下(長期服用による予防効果)
  • ただし、子宮頸がんのリスクがわずかに上がるとの報告もあるため、1~2年に1回の子宮頸がん検診を受けることをおすすめしています。

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    ピルの服用と年齢の関係性って?

    ピルは、年齢を重ねても服用できる薬ですが、「喫煙している」「持病がある」などの条件によって、服用できる年齢に制限が生じる場合があります。
    また、血栓症のリスクは年齢や生活習慣にも左右されるため、自身の健康状態と照らし合わせて医師の判断を仰ぐことが大切です。

    喫煙者の場合は35歳で服用禁止になる

    喫煙者の場合、非喫煙者に比べて心血管系疾患などのリスクが高いため、35歳でピルの服用が禁止となり、35歳未満では慎重投与となります。
    ただし、禁煙をすることで服用を続けることができる場合もあります。ピルの服用継続を希望する方は、医師と相談しながら禁煙も検討してみましょう。

    中高生も服用できる

    年齢の低い中学生・高校生であっても、初経が来ていればピルを服用することができます。未成年の場合は処方時に親の同伴などが必要な場合もあるため、事前に病院のHPに記載がないか確認したり、病院に電話で問い合わせてみたりするのがおすすめです。

    年齢以外で気を付けたいのは?

    年齢以外に、アフターピルを服用する上で注意しておきたい条件はあるのでしょうか?実は、すべての方が安全に服用できるわけではなく、持病や体質によっては服用できない場合があります。あなたの体を守るためにも、以下の条件に当てはまらないか確認しておきましょう。

    ピルやアフターピル成分に過敏症がある

    過去に、ピルやアフターピルの成分に対して過敏症が起きたことがある場合は、ピルの服用によって再び過敏症が見られる可能性があるため、服用できません。過敏症の症状には、発疹、かゆみ、腫れなどがありますが、命に関わる重篤なアレルギー反応につながる可能性もあるからです。安全のため、過去に薬でアレルギーを起こした経験がある方は、必ず問診時に医師に伝えましょう。

    重篤な肝障害がある

    肝臓は、ピルのような薬の成分を分解・代謝する非常に大切な臓器です。重篤な肝障害がある方は、肝機能が低下しているため、ピルやアフターピルの服用によって肝臓に過剰な負担がかかり、病状が悪化する恐れがあるため服用できません。
    肝臓の機能がもともと落ちている方は、低用量ピルを含め薬が体内で適切に代謝されずに効きすぎてしまうリスクもあります。肝臓の病気で治療中、または過去に病歴がある場合は、必ず医師にその旨を伝えてください。

    妊娠している

    妊娠している(またはその可能性がある)場合は、ピルの服用はできません。低用量ピルはホルモンの働きで排卵を抑える薬ですが、妊娠を継続している状態での安全性は確立されていません。
    万が一、妊娠に気づかずにピルを飲み続けてしまったとしても、胎児に大きな影響はないとされていますが、妊娠がわかった時点ですぐに服用を中止し、医師に伝えてください。

    子宮筋腫を発症したことがある

    子宮筋腫がある場合、筋腫の種類や大きさによっては、ピルの服用が難しいことがあります。ピルの服用によって筋腫が急激に大きくなることは稀であり、ピルが生理の出血量を減らすことで筋腫の症状を緩和できる場合もあります。子宮筋腫の既往歴がある方は、必ず医師に伝え、相談したうえで服用を始めましょう。

    乳がんを発症したことがある

    乳がんは、女性ホルモンの影響で進行する可能性がある病気です。そのため、乳がんの既往歴がある方は、女性ホルモンを含むピルの服用はできません。これは、ホルモンの影響で病気が再発したり悪化したりするのを防ぐためです。ご自身の安全のために、乳がんや子宮がんなどのホルモン依存性の腫瘍の既往がある場合は、必ず医師に報告してください。

    肥満

    肥満(BMIが30以上など)の方は、ピルの服用に関わらず、血栓症のリスクが高くなります。ピルを服用することで、その血栓症のリスクがさらに上がってしまうため、特に注意が必要です。BMIの数値が高い方や、高血圧・糖尿病などの持病がある方は、必ず医師に伝えてください。

    家族が血栓症になったことがある

    自身の健康状態だけでなく、家族が血栓症などの心血管系疾患になった既往歴がある場合も、服用前に医師に伝えるべき重要な情報です。血栓症には遺伝的な要因も関わる可能性があるため、医師は家族歴も考慮して、あなたにとって安全な服用が可能かどうかを判断します。安全性を高めるためにも、遠慮せずに伝えましょう。

    ピル以外で50歳以上におすすめの避妊方法は?

    ピル以外で安全な避妊方法はないのでしょうか?50歳以降は血栓症などのリスクが高まるため、体への負担が少ない方法を選ぶことが大切です。
    ここでは、閉経前後の女性が安心して活用できる、ピル以外の効果的な避妊方法を紹介します。

    コンドーム

    最も一般的で手軽に行うことができる避妊方法です。正しく理想的な使い方をすれば避妊率は約98%とされますが、実際には性交渉中の破れや外れなどにより、避妊率は85%ほどとされています。そのため、取り扱いには注意が必要です。
    しかし、コンドームは性感染症(STD)の予防にもなる避妊法です。ピルを服用しているかどうかに関わらず、自身の体を守るためにも、正しく使用することが大切です。

    ミレーナ

    子宮内に直接装着する避妊具であり、一度装着すると避妊効果が約5年間継続します。ミレーナは血液凝固作用のあるエストロゲン(卵胞ホルモン)を含まず、黄体ホルモンのみを含むため、血栓症リスクが高くてピルを服用できない40代〜の方でも装着することができます。
    ただし、副作用として不正出血や下腹部痛などが見られる可能性があるため注意しましょう。
    ※ミレーナの適応は医師の判断になります。

    ミニピル

    ミニピルは通常の低用量ピルとは異なり、血液凝固作用のあるエストロゲン(卵胞ホルモン)を含まず、黄体ホルモンのみを含んでいます。そのため、血栓症リスクから低用量ピルを服用できなくなった方でも服用可能なピルだといえます。正しく服用すれば低用量ピルを同程度の避妊効果がありますが、含まれているホルモン量が少ないため不正出血が起こりやすい点に注意が必要です。

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    ピル以外で50歳以上におすすめの更年期治療は?

    50歳前後になると、ホルモンバランスの変化によって更年期症状が強く出やすくなります。ピルでの治療が難しい年代でも、症状をやわらげる方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
    ここでは、50歳以上の女性におすすめの更年期治療法をわかりやすく紹介します。

    漢方

    漢方療法は、昔から更年期の不調を整えるために使われてきた自然な治療法です。植物などの生薬を組み合わせて作られた漢方薬を使い、体全体のバランスを整えることを目的としています。
    ひとつの漢方薬で、冷えや動悸、イライラなど複数の症状をまとめてケアできるのが魅力ですが、体にやさしく続けやすい反面、効果が出るまでに時間がかかることや、体質に合わないと効果が出にくいという面もあります。
    しかし、持病などの関係でホルモン補充療法を受けられない方には、漢方療法がおすすめです。

    ホルモン補充療法(HRT)

    ホルモン補充療法(HRT)は、更年期に減少した女性ホルモンを、飲み薬や貼り薬などで補う治療法です。ホットフラッシュ(のぼせ)や発汗、動悸などのつらい症状に比較的早く効果があらわれやすいのが大きなメリットです。
    一方で、薬の種類や体質によっては副作用が出ることもあるため、医師と相談しながら進めることが大切です。

    ピルの50歳以上の取り扱いに関するよくある質問

    50歳でピルをやめたら、そのあとの更年期症状がこわい…

    ピルをやめたからといって急に症状が悪化するわけではありません。ただし、これまでピルで女性ホルモンが補われていたため、隠れていた更年期症状が出てくる場合はあります。
    症状がつらい場合は、ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬での治療法もあるため、医師に相談しましょう。

    低用量ピルを50歳まで飲んでいると閉経したかはわからないのでは?

    ピル服用中に起こる出血は薬の作用による消退出血であり、閉経後も続くため、服用中は閉経を判断できません。
    そのため、医師は45歳頃を目安に、一時的にピルの服用を中止することを提案します。服用を中止した後、自然な月経が来るかを確認するか、あるいは血液検査でホルモン値を測定することで、閉経したかを判断します。この検査を経て、問題なければピルを継続し、閉経が確認されればホルモン補充療法へ移行する場合があります。

    50代を目前に、閉経していないならOK?

    WHOや日本のガイドラインにより、50歳以上の方は、まだ閉経していなくても血栓症のリスクが著しく高まるため、低用量ピルは原則として服用できません。
    また、40代であっても、喫煙者(35歳以上で1日15本以上)や肥満(BMI30以上)、高血圧、糖尿病といったリスク要因がある方は、原則として服用ができないので注意しましょう。自身の安全のため、必ず医師の判断を仰ぐのが大切です。

    まとめ

    今回は、50歳以上でもピルを服用できるのかについて解説しました。年齢が上がるほど血栓症のリスクが高くなるため、ピルは原則として閉経前の50歳までの方しか服用できないとされています。
    ただし、ピルを服用できるかどうかは、年齢に関わらず、喫煙や持病の有無などによっても異なりますので、必ず医師の指示に従ってくださいね。

    また、40歳以上のリスクが高い年代でも、コンドームやミレーナなどの避妊方法や、更年期障害の症状に対しては漢方薬やホルモン補充療法(HRT)などの治療法があります。不安な場合は、医師と相談しながら、あなたに合った最適な方法を選んでいきましょう。
    ホルモンの変化は、誰にでも起こる自然な体のサインです。焦らず、自分のペースで向き合っていきましょう。これからの毎日を少しでも心地よく過ごせるように、体と心をやさしくいたわってあげてくださいね。

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    淀川キリスト教病院 医長
    柴田 綾子
    2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修し、2013年より淀川キリスト教病院で産婦人科診療を行う。 2022年よりmederi株式会社において、mederi主催のセミナーやイベントに登壇、mederi magazineの記事監修を担当などを担当。

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